1)災害支援活動経験者による原案作成 |
重み付けの基本的事項として、まずその役割がそれぞれの要因の枠組みの中で「必要」か、「必要でない」か、あるいはその役割そのものが存在しない「適用外」かを分析した。次に看護の役割が「必要」なものに関しては、どの程度必要かを以下に示す1〜3のレベルに分けて分析した。
NA:適用外(看護の役割そのものが存在しない)
0:必要無し(看護の役割は存在するが、その時点では必要が無い)
1:必要
2:必要と非常に必要の中間位
3:非常に必要
具体的な重み付けは、検討会メンバーの中で、災害支援活動をされた方に災害看護プロジェクトメンバーが直接インタビューする形で行った。 |
2)「災害時の看護の役割」の重み付け原案を検討会にて検討 |
災害看護プロジェクトチームにより作成された原案を検討会において審議した。 |
3)「災害時の看護の役割」の重み付け原案を各施設にて検討 |
検討会の審議結果を検討会のメンバーの所属する各施設に持ちかえり、疑問点、追加/削除すべき点等の意見をもらった。 |
4)「災害時の看護の役割」の重みを、災害看護プロジェクトチームで再検討 |
災害看護プロジェクトチームにおいて、各施設からの意見を反映させ、再体系化した。その結果を検討会にて再び審議し、最終結果の同意が得られたことで、検討した重み付けのプロセスを今年度の研究成果とした。
大カテゴリー「被災者の生活の立て直し」/中カテゴリー「生活ニーズへの対応」/小カテゴリー「生活行動の援助」の中のA項目の49番である「生活支援」を例に、災害時の看護の役割の変化について説明する。表3の右側の欄に示す数字は、災害時の看護の役割への重み付けを行った結果であり、数値およびNAの意味は前述の通りである。「生活支援」の、常勤保健婦・士と派遣看護婦・士の「災害時の看護の役割の重みの変化」をグラフに表したものが図6である。尚、図中「-1」はNA(適用外)を示す。
「生活支援」の役割は、常勤保健婦・士と派遣看護婦・士どちらの場合でも、災害前はNAである。災害の起こる前における「生活支援」の具体的な役割は存在しないことになる。災害が発生して24時間までは、常勤保健婦・士のこの役割は最も高い3の「非常に必要」になる。この役割が最も高い3だからといって他の役割が低くなる訳ではなく、役割一つひとつは独立して、時間や場所等の条件により重みが決まってくると考えている。派遣看護婦・士のこの時点の「生活支援」の役割はNAで、役割そのものが存在しないと考えた。災害発生後24時間から72時間では、常勤保健婦・士の役割は相変わらず3の「非常に必要」であるが、派遣の看護婦・士の役割の程度も1の「必要」に変化し、救急救命等の役割に合わせ「生活支援」の役割も果たすべきと考えた。72時間から2週間では、生活物資等の供給も始まり、常勤保健婦・士の「生活支援」の役割は1ランク低くなり2に変化すると考えた。一方、派遣看護婦・士の場合は、看護者として被災者の「生活支援」の役割を1の「必要」のレベルでは果たすが、それ以上の役割は常勤保健婦・士に譲り、診療機能の維持等の役割に重きを置くべきと考えた。2週間から1ヶ月経過すると、生活物資等の供給も順調になり、ボランティアのサポートも可能となるので、常勤保健婦の「生活支援」の役割は、1の「必要」のレベルになると考えられる。また、派遣看護婦も前のTime Phaseと同様に1のレベルを維持する。1ヶ月から3ヶ月では、常勤保健婦は1の「必要」のレベルを維持するが、派遣看護婦は派遣を終えるため、NAの「適用外」となる。3ヶ月以降も役割の重みは同程度と考えられる。
本節の目的は、「災害時の看護の役割」の重み付け方法の検討であり、重み付けそのものを議論することではなかった。あくまでも前述の説明は、重みの捉え方の議論のためのものであり、このように考えると「災害時の看護の役割」の重みを付けることができ、それをすることにより効果的/効率的に災害時の看護の役割を果たせることを示している。
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