災害看護支援ネットワーク研究in高知
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平成23年度 研究活動の報告 目次

◆◆ 都道府県看護協会と都道府県との災害看護協力協定締結の阻害要因
高知県災害看護支援ネットワーク
山田覚、森下安子、竹崎久美子、谷脇文子、大川宣容、井上正隆、高谷恭子(高知県立大学)、秦菅、小松香代子 (災害支援病院)、中村ささみ(高知県看護協会)


1.はじめに
 都道府県看護協会(以下、看護協会)と都道府県(以下、県)の間で、災害看護協力協定(発災時に県と協力して看護活動を行うことを期待される取り決め)を締結するところが次第に増えている。しかし、全く協定締結に関心の無いところもあり、地域により温度差があるように思われる。そこで本研究は、災害看護協力協定締結促進の一助とするため、協定締結に至らない阻害要因を検討したので報告する。


2.研究方法
 全ての看護協会および県に、互いの災害看護協力に関する質問紙を送付し、回答を求めた(平成21年12月〜翌1月)。「締結していない理由」と「締結しなくても、看護協会/県と上手に連携がとれている理由」の記載を依頼した。本調査は、高知女子大学看護研究倫理審査委員会の承認を得て実施した。


3.結果
 看護協会から39件(回収率83.0%)、県から35件(回収率74.5%)の回答があった。得た回答をコード化し、KJ法により分析した。

1. 災害看護協力協定を締結していない理由

1) 看護協会
 『災害に対する認識不足』、『災害看護活動の実行可能性の認識不足』、『災害支援ナースとその活動の認識不足』、『県協会の体制整備不足』の4カテゴリーが抽出された。

2) 県
『看護師は他のチームに含まれる』、『協定締結の認識不足』、『県防災体制を検討中』、『災害支援ナース派遣に伴う財源等の課題』の4カテゴリーが抽出された。

2. 締結しなくても、看護協会/県と上手に連携がとれている理由

1) 看護協会
 『密接な情報連絡』、『県防災体制への参加』、『多様な県防災訓練への参加』、『過去の連携経験』の4カテゴリーが抽出された。

2) 県
『日頃の情報交流と連携』、『行政との救護・活動支援体制の確立』、『防災訓練等への参加』、『相互協力体制の確立』の4カテゴリーが抽出された。


4.考察
1. 災害看護協力協定を締結していない理由
 看護協会は、災害救護において、災害支援ナースのように看護職独自で活動を展開するという認識が薄く、また、行政との関わりの中で看護としての活動も実行可能であろうと判断し、行政の縦系列の指揮命令系統にて活動が展開できるものと考えているようである。一方県は、看護職の災害救護活動は、医師会の救護班やDMATの1メンバーとして動くものと考えており、施設あるいは地域において、看護職独自で活動することは想定していないようである。よって、看護職はある組織やチームに所属していて、その組織等が県との協定を締結していれば、看護職も十分にその力を発揮できるものと考えている。
 また、看護協会は、災害支援ナースを受け入れるための体制整備の不足を挙げており、県は災害支援ナースの派遣に伴う財源の課題を挙げている。

2. 締結しなくても、看護協会/県と上手に連携がとれている理由
 看護協会は、県の防災体制に参加して、これまでの活動も含め密接な関係にあることにより、県と連携がとれていると考えている。また、県も看護協会が、県の防災体制に参加して、協力体制が互いに確立していると考えている。しかし、実際の災害下での混乱した状況では、ある一定のルールが無いと活動そのものが開始されないこと、あるいはそのルールに則って活動しないと効果・効率的に活動できないことを互いに認識していないようである。


5.結論
 看護協会と県とで災害看護協力協定を締結していないのは、両者が災害における看護の独自の活動を認識していないこと、および防災訓練に参加したり、県の防災体制に看護協会が参加していることにより、日頃の関係性が確立さていれば、災害時にも種々の活動ができると誤認しているためであった。

 
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