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第19回学際的交流サロンでは、健康栄養学部の鈴木麻希子准教授から発表がありました。慢性腎臓病(CKD)とは腎機能低下が慢性的に続く状態で、自覚症状なく進行していき、放置したままにしておくと末期腎不全となって人工透析や腎移植を受けなければならない状態になってしまいます。末期腎不全は世界的に増えており、いわゆる“隠れ腎臓病”のうちに、早期発見・早期治療することが大切です。現在、日本では成人の5人に1人のCKD患者がいると言われ、その原因として、高血圧や糖尿病などの生活習慣病によるものが多くなっています。
腎機能の低下は、リン代謝異常をもたらし、リン代謝異常はCKD患者に共通してみられます。リンには植物性・動物性食品に含まれる有機リンと加工食品に含まれる無機リンがあります。無機リンは食品添加物として多くの加工食品に入っていますが、その具体的な摂取制限量は明確に示されていません。無機リンの吸収率は有機リンよりも高いため、CKD患者には特に影響が大きく、CKD患者の無機リンおよび総リン摂取量と予後との関連を明らかにする目的で研究が行われました。
本研究では、加工食品から無機リンの抽出方法・抽出条件等の定量方法を確立し、数種類の加工食品の無機リンおよび総リンの定量を行ったことが報告され、今後は基礎疾患をもつCKD患者を対象に無機リンおよび総リンの摂取量を把握し、腎機能低下や生命予後等の関連を明らかにしていくことが報告されました。
本セミナーでは、CKDがどういう病気か、また加工食品の中にいかにリンが多く含まれていることが定量的に示され、加工食品の利用には注意が必要であることを実感しました。
【 参加者数 : 合計 34名(発表者含む) 会場 6名、Zoom 28名 】